日経日曜コラム 『半歩遅れの読書術』 に、2人の国際政治学者が2週続いて登場し、彼らが心酔する高坂正尭の著書を一冊ずつ紹介しています。
いずれも、予てより書名は知っていましたが、読み損ねていた名著です。
『国際政治 恐怖と希望』1966 中公新書
http://www.ranpub.com/~t-sawa/rev/nf_etc_01.html
推薦者(村田晃嗣同志社大学学長)の寸評。
・・国際政治は、力の体系であると同時に、利益の体系であり、価値の体系であると、著者は説いている。いずれか一つの視点しか持たなければ、軍事オタクの国際政治や株価の国際政治、思い込みの国際政治になってしまう。国際政治には何よりも、複合的な視点が大事なのである。
(この点では中国はもとより韓国すら、短絡的な日本より遥かに大人です。馬鹿正直な坊ちゃんが海千山千の山師に勝てるわけが無い!)
『世界地図の中で考える』1968 新潮選書()
http://club.pep.ne.jp/~y.hosoya/booksreview/kousaka-sekaitizu.htm
推薦者(細谷雄一慶応義塾大学法学部教授)の寸評。
・・1965年10月から5ヶ月間ほど、南半球のタスマニア島で過ごした。なぜか、・・・本当の理由は、タスマニア島の原住民の滅亡の理由を知りたかったからだった。
そして高坂は学んだ。タスマニア原住民を滅亡させる上で最も効果があったのは、イギリス人の鉄砲でも大砲でもなかった。皮肉なことに、そうした文明の利器よりも、イギリス人が彼らの体の中に携えてきた微生物が、はるかに有効だったのである。
・・高坂のすごさは、このエピソードを国際政治学において一般化して論じる力である。国際政治学の世界でも、軍事力は悪であるし、戦争は悪である。しかしそれらに対する免疫力を高めて、それらを内側に取り込むことで、われわれは強くなれる。
高坂は論じる。「ごく簡単に言えば、より多くの病原菌を体内に持っている人間がより多くの病気に耐えうるのである」
ところがわれわれは、純粋な善を求めている。
高坂は嘆く。「バクテリアに対する医学の考え方は随分進歩したのに、悪に対する人間の態度はギリシャ時代からまったく変わっていないし、ある意味では悪化さえしている。社会のさまざまな疾患の原因を一つの要因に求め、それを除去することに血道をあげている人がいかに多いことか」
(護憲論者に聞かせたい言葉です)
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