6月28日の日経朝刊で、ICT業界の所謂 “クラウド” 特集をやっていた。 まったく、この業界は空疎なコンセプトを振り回して人を騒がせるのが好きだ。 これは、今に始まったことではなく、1964年に米IBM社 が SYTEM/360シリーズ を鳴り物入りで売り出して以来、ずっと変わらない。
当時、私は富士通の新入社員だったが、某都市銀行から内緒で借り出した(もう時効だろう!) SYSTEM360 の解説書 "Concepts and Fascilities" の要約を命じられ、その体系的かつ論理明快な、しかし、空疎で大げさな記述に痛く感心したものだ。 内容は殆ど UNIVAC 社の OS (EXEC?) の焼き直しであった。 その後1968年10月に我々富士通が旧第一銀行で完成した OLTP の必須機能(排他制御とトランザクションリカバリー)を 日本IBM社 が実現したのは70年代の第2次オンラインシステムにおいてである。 さらに、同機能を 米IBM社 が提供するのは、何と80年代の第3次オンラインシステムになってからであった。
しかし、これを米国に対する日本の優位と考えたらとんでもない間違いを冒すことになる。 何故なら60年代に我々富士通の技術陣が ORBS (オンラインリアルタイムバンキングシステム) の開発で 日本IBM社 を抜いたと豪語しかけた時、米IBMワトソン研究所のフェローだった James Martin 博士が著した "Real Time" には、我々の考えた原理が精密かつ具体的に解説されていたからである。
これは何を意味するのであろうか。 つまり、敗戦後の日本以外の先進国において、最先端技術はすべて軍事機密として秘匿されているということである。 民間に開放されるのは、国家の存亡に影響のなくなった陳腐化したものだけだということを肝に銘ずる必要がある。 広島・長崎型原爆然り(水爆だけは教えない)、インターネット然り(軍事用スパイウェアーは教えない)、GPS然り(偵察衛星の精度は教えない)、日本が介護用ロボットで騒いでいる間に、気がついたときにはロボット兵器が量産されているはずだ。
話が逸れた。 新しい目眩ましのコンセプト "クラウド" に戻そう。 この特集では、専ら、新産業創造 に焦点が当てられているが、それはそれでよいとして、私がここで取り上げたいのは、米ツイッター CEO G・パス氏 と 国立国会図書館長・長尾真氏の話である。
パス氏は、4つの設計原則とかいろいろ例によって目眩ましのコンセプトを掲げているが要するに個人が好き勝手なことを世界中の誰とでも好き勝手なときに喋り合える巨大な井戸端を作ろうと言うもので、普通の日本人は、"それは楽しそうだ" あるいは、"それは儲かりそうだ" くらいしか考えないだろう。 私もそれだけであることを祈る。
しかし、ことによるとこれも軍事技術の戦略的開放の一環かも知れない。 つまり、世界中の呟きを監視し、反米的発言をスクリーニングするための技術開発が完了したので、いよいよ "呟き監視ネットワーク" の国際展開に乗り出したのかも知れないのだ。 少なくとも米国政府が安全保障のスクリーニングをパスしない技術を国外に開放することはない(これが厳然たる事実であることは世界中の識者の常識である)のだから、このくらいは当然と考えるべきだ。
長尾氏の指摘は、全国の学術情報を一元化し、日本中の学術情報を何処にいても利用可能にすることが学術振興延いては産業発展のために重要だというもので、それはそれで全くそのとおりである。
しかし、私がそれ以上に重要だと考えるのは、放っておけば蒸発(揮発)してしまう電子情報をいかにして後世に遺すかと言うことだ。 紙情報にはパピルス以来、数千年の人類の営為が記されている。 さらに、貝塚には、数万年前の営為の痕跡が残されている。 果たして、ホームページやブログ、はたまた、2チャンネルやツイッターにどれほどの寿命が期待できるだろうか。 つまり、私がここで言いたいのは、便利にすることばかりでなく、後の世に残すことも考えようということだ。 そうすることで、コミュニケーションの相手を未来にまで拡げることが出来るではないか。
そこで、この際、情報貝塚 構想(The Concept of Information Shellmound) を提案する。
2010年7月2日金曜日
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案の定というか、恐れていたとおりの実態が明らかになり始めました。
返信削除https://www.youtube.com/watch?v=cP1Dw83upkQ